確率を受け入れること

自分にもうすぐ子どもが出来るということで、ソレ系の情報を気にして収集していると、ネットにあふれるヒステリックな親たちの言動が頻繁に目につく。

「雑菌」「合成」「電磁波」などのキーワードに過敏に反応して、我が子を浸蝕する全ての害悪から遠ざけるために必死な親たち。そういう彼らが、病院で使ってるタオルは実はクリーニング屋で合成洗剤で洗ったものですとか知った日には何を言われるかわかったもんじゃない。

その同じ彼らは、自分に対しては「仕事をしながら子育てするんだから完璧になんて無理です」とか言ってるわりに「行政」と「医療機関」に対して異常なほど完璧を求めたがる。

とくに医療機関への、妄想にも近いゆがんだ信頼はどうにもおかしい。

「(わたしはできないけど)プロなんだから赤ちゃんから片時も目を離さず世話できるはず」
「(わたしはわからないけど)プロなんだから赤ちゃんに害のある薬品などは全部わかってるはず」
「(わたしはできないけど)プロなんだから・・・・」

まあ冷静になって、知ってる範囲の知識でもわかることを考えてみればいい。

病院にベッドが30床あります。看護師は3人です。全ての看護師が昼間の8時間休憩も全く取らずに患者の面倒を見たとして、一人の患者は看護婦に何時間見てもらえるでしょうか。

こたえは 8 ÷ (30 ÷ 3) = 0.8 時間 = 48分。
で、実際には記録付けたり廊下を歩いたり医者と話したり、もちろん束の間休憩もとるわけなので、もっと少ない時間になる。そういう簡単な計算による結果はどんなスーパーマン的能力を持った人でも乗り越えることはできない。

薬品にしたって、使っている全ての薬品が害が「ない」ことを証明している、なんてはずないじゃんか。当たり前でしょ。


また、手術というのはある確率で失敗する。それは医龍みたいなスーパー天才外科医がやってもどうにもならない症状だったからかもしれないし、難しいところでちょっと手が滑ったからかもしれないし、数知れず出ていた兆候のうち特定の一つに気づかなかったからかもしれない。全部ひっくるめたものが失敗確率といえる。

分娩術というのは、実際に失敗確率が高い手術の一つらしい。死産は昔から数え切れないほど起こってきた。人間が最も死にやすいのは生まれるときなのかもしれない。でも最近、失敗を受け入れられない人が裁判を起こすケースがいくつか発生した。裁判になってしまえば、医師の不手際を調べざるを得なくなる。調べれば、たいてい何かは見つかるだろう。

「プロなんだから不手際なんかあるはずがないしあってはならない。だから不手際があれば有罪だ」

という人は、自分が仕事上で一ヶ月に何回不手際を起こすか思い出してみれ。僕は一ヶ月で数十個のバグを作ってる。それがシステム上致命的な場合もあるし(…いや、あんまりないか)、ちょっと表示が乱れるだけの場合もある。でもその表示が乱れたことによって、たとえば人が死んだら、僕は有罪か?勘弁してくれ。



産婦人科、小児科のお医者さんが減って、歯医者さんが激増中だという。

自分が医学部を出たての研修医だったとして、医師免許を首尾良く取ったはいいがさて、何科の医者になろうかなと考えると、そりゃあやっぱり産婦人科や小児科にはなりたくない。仕事上のケアレスミスで、まさか裁判起こされて、最悪前科が付くなんて、そんな馬鹿馬鹿しい仕事はしたくない。できるだけ人が死なない科がいい。そう考えれば歯医者サイコー。

産科医が減れば困るのは妊婦とその家族なのに、自らヒステリックな振る舞いをすることで職業選択を始めたばかりの若者に大きなプレッシャーをかけている。

あ、いいのか。困るのはダイレクトに自分じゃなくて数年後に妊婦になる人たちだからいいのか。そっか。
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by tockri | 2006-08-30 17:17 | ├ かんがえごと
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